ゼロからはじめる小説同人誌 の、猫の巻。

「虎の巻(「芸事などが上達する秘訣を記した書」)」には及ばないけど、でも、ほんとのことだけ記していくよ! 小説同人誌にまつわるそんな心意気を、もりもりこめたブログです。

てにをはが汚い小説は、読む気を失う

 

こんにちは。

猫宮ゆりです。

 

小説技術の話を掘り下げるこのカテゴリー、今回は

「てにをは」について。

 

どれだけ面白いストーリーでも、巧みで自然な人物描写でも、

てにをはが汚い小説はやっぱり難があります。

 

とはいえ感覚的な話ですし、小説がその人その人の自由な表現である以上、

間違いもないわけですから具体例を挙げて「これは汚いてにをは」と

断言することはできません。

が、

 

てにをはが汚い、ということは、

「そこに作者の意識が向いていない」ということだ、

とは、言えます。

 

 

自分で作品を読み返してみた時に、

 

すべてのてにをはが引っかからず読めるかどうか。

すべての文章がつつがなく繋がっているかどうか。

すべてのてにをはと句読点がいちばん落ち着きのいい場所に

定まっているかどうか。

 

そこを、重要視していなかったか、〆切に押されて省かざるを得なかったか。

そのどちらか、あるいはどちらもであると露呈すること、と言えます。

 

文章のうまいへたの話ではないのです。

作者が心を注いで紡ぎ、つぶさに意識を向けて練りあげた小説は、

その文章がたとえ稚拙であってもきちんとその軌跡を力として表します。

 

「私はこの文を、ほんとうにこれがいちばんいいかたちだと感じているか」

そこへどれだけ肉薄できたかが、てにをはの選択に集約されて見えてきます。

 

 

美しく引っかかりがないてにをは、

正しい文脈で正確なてにをは、

そして、自分らしく工夫が施されたてにをは。

小説には、そのどれもが肝要で大切です。

自分はその中のどれを、もっとも重要とするか、したいのか、それを

核に据えて取り組めば、てにをははぐっと洗練されてくるはずです。

 

 

それと、個人的に感じるのは、

若い人はおおむね、「へ」の使用頻度が少ないかもしれない、と

いう点です。

 

「へ」はとても詩的で、ひろがりのある優れた助詞です。

「へ」と「に」は、厳密には用途が違っていましたが、小説に

用いるのであれば自分がふさわしいと感じるほうを選べばいいので、

もっと「へ」が活用されたら素敵なのになあと自分は思います。

 

たとえば、

「先に右にあるトイレに行った」

という、いささか回りくどい幼稚な文章も、

 

「先に右手のトイレへ行った」

とすれば、より端的で明瞭な表現に変わります。

 

ドラクエ3の副題「そして伝説へ…」などはまさに、

「へ」でなければ表し得ない、豊かな詩情があふれていますね。

 

 

☆「へ」にまつわる、こんなデータもありました。

日本語調査 助詞『に』と『へ』の使い分けについて

 

 

自分はどんな文章が好きで、どんな表現をしたいのか、

どんなてにをはを美しいと感ずるか。

それを真摯に考えていくと、みるみる文章の質が磨かれていくはずです。

 

 

 

猫宮ゆり

ゼロからはじめる小説同人誌

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